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2023.09.11コラム

SNS投稿例で理解するステマ規制(1)景品表示法の場合

SNS投稿例で理解するステマ規制(1)景品表示法の場合


2023年9月11日から「ステマ規制」が施行となります。自社の対応は今のままで大丈夫なのか、そもそもステマ規制が社内周知できているか不安、といった広告関係者も多くいらっしゃるのではないかと思います。

本連載の第3回は、クチコミマーケティング協会(WOMJ)運営委員会副委員長 ガイドライン担当の山本京輔が、「ステマ規制」の中身を解説します。自社でステマとならないマーケティング活動を行うことができるよう、ぜひご一読ください。

後半では具体的なSNS投稿例なども交えながら、「ステマになる」「ならない」の境界線について考えていきます。

消費者庁の「ステマ規制」とは何か

まずは以下のSNSのつぶやきをご覧ください。

※この投稿は架空のものです

KenneyさんがA社のチューハイを飲みながら焼き鳥を食べた感想のようです。一見何の変哲もないこのようなつぶやきにも、見方によってはステマ規制が関わってきます。これについては記事の後半で解説します。

ステルスマーケティングが社会問題化していることを受け、消費者庁の景品表示法(景表法)5条3号に「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定する表示」として「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(指定告示)が追加されました。

これがいわゆる「ステマ規制」です。消費者庁は、2023年の3月28日に「指定告示」を公開し、同年10月1日から施行となります。以下がその全文です。

ステマ規制 指定告示(2023年3月28日)事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの。

「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」(以下、「事業者の表示」)はいかにも理解しづらい文章ですが、事業者が商品やサービスの取引について行う表示と言い換えることができます。この「表示」とは、広告の宣伝文をはじめとする、文字・音声・画像・動画などで表されているもの、を指します。

ざっくり理解するには、「事業者の表示」(≒広告、インフルエンサーに依頼した投稿など)と考えておきましょう。
以上を前提に言い換えると、ステルスマーケティング(不当表示)とみなされる対象は以下となります。

ステマ(不当表示)とみなされる対象事業者の広告や、インフルエンサーに依頼して投稿されたもの(事業者の表示)であるのに、そうと分かりづらくなっているもの(判別することが困難)

ステルスマーケティング(不当表示)とみなされた場合、措置命令などの対象となる、という意味でもあります。

今回の指定告示はインターネットのコンテンツだけでなく、テレビや新聞などのマス媒体を含めたすべての表示が対象となります。

また、インターネットにある情報は、2023年9月30日以前に掲載したものでも10月1日以降閲覧可能な状態となっているものは規制対象となります。つまり、これまでに行ったインフルエンサーや従業員の過去のSNSの書き込み、事業者のWebサイト内の記述もそのままにしておくと対象となります。

「事業者の表示」について理解する

規制の対象を明確にして対処するには、何が「事業者の表示」にあたるのか、そしてどんな状態が「判別することが困難」か、を知る必要があります。まず、「事業者の表示」を次のように分けて解説します。

■事業者の表示とは?

1) 事業者自らが行う表示:第三者の表示のように誤認させるもの

事業会社の従業員や利害関係者が、第三者を装って行う「なりすまし」や「自作自演」がこれにあたります。取引先・協力会社なども対象に含まれる可能性があります。

2) 事業者が第三者に行わせる表示:
(ア)事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合
(イ)明示的な依頼・指示がなくとも「表示内容の決定に関与した」と認められるもの

こちらはインフルエンサーなどの第三者に依頼・指示関係があれば対象となるということです。

では、上記をKenneyさんのつぶやき例で確認してみましょう。

※この投稿は架空のものです

<1>KenneyさんはA社と無関係の一般人で、何の依頼も利益供与も受けていない場合

→事業者の表示ではない

コンビニで「Bチューハイ」をたまたま買った第三者が、広告で見た通りヤキトリと一緒に飲んだ感想を述べていたのであれば、何の問題もありません。

<2>Kenneyさんは実はA社の社員で、Bチューハイの宣伝担当者だった場合

→事業者の表示である

商品の販促が必要な立場にある人の発言は、個人の発言であっても「事業者の表示」と判断されます。投稿の中で「Bチューハイの宣伝担当である」という明示をしなければ、ステマ規制の対象となります。

<3>KenneyさんはA社の社員だが、Bチューハイと全く関係ない業務をしている場合

→事業者の表示ではない

同じA社であってもBチューハイに関係のない仕事をしている従業員の個人のつぶやきは「事業者の表示」にあたりません。ただし、Kenneyさんが同期入社のBチューハイ宣伝担当者からクチコミの協力依頼を受けて投稿したのであれば「事業者の表示」です。

<4>KennyさんはA社の社員ではないが、広告会社や制作会社などでBチューハイの広告宣伝に関係する業務をしている場合

→事業者の表示である

A社従業員でなくともBチューハイの宣伝に関わる関係会社に勤めておりかつその業務に従事しているということであれば、「事業者の表示」と判断されます。

以上4つのケースのように、事業者の従業員が行った表示(投稿やクチコミ)も、「事業者の表示」となる場合とならない場合があることに留意しましょう。

「事業者が第三者に行わせる表示」について理解する

引き続き、「事業者の表示」の2)「事業者が第三者に行わせる表示」の例です。以下、Kenneyさんが第三者のインフルエンサーであるという立ち位置で考えます。

※この投稿は架空のものです

<1>A社がKenneyさんにBチューハイを1ケース贈り、「SNSでヤキトリとの相性を紹介してください!」と依頼していた場合

→事業者の表示である

事業者からの明示的な依頼であるため、前述(ア)の「事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合」にあたります。商品ではなく金銭10万円を支払ったというような場合も同様です。
<2>事業部長がインフルエンサーKenneyさんとの会食で「あなたのSNSでの影響力を知りたいと思っている」と発言した。Kenneyさんは仕事が欲しいと思い、後日Bチューハイを自分で購入し、投稿した場合

→事業者の表示である

部長の発言は、明示的な指示や依頼ではありませんが、言外に今後の取引を匂わせていたと受け取れます。そのため、Kenneyさんのつぶやきは、第三者の自主的な意思による表示内容とは客観的には認められず、「事業者の表示」となるのです。(イ)の「明示的な依頼・指示がなくとも“表示内容の決定に関与した”と認められるもの」にあたります。

<3>A社が、過去に何度も商品を提供、タイアップ動画の投稿をお願いしたこともあるKenneyさんに、SNS投稿への依頼・指示はしないものの「新商品のBチューハイはヤキトリとの相性が良いことを訴求したいと思っています」というメッセージとともに商品を提供していた場合

→事業者の表示となる可能性がある

A社がKenneyさんに商品特徴を添えて商品提供しただけでは明示的な指示・依頼ではありませんが、やはり第三者の自主的な意思による表示内容とは客観的には認め難く、かつ表示内容を決定できる程度の関係性があるため、(イ)の「明示的な依頼・指示がなくとも“表示内容の決定に関与した”と認められるもの」にあたるとされる可能性があるのです。

このように、「事業者が第三者に行わせる表示」は、言外に経済上の利益をもたらすことを感じさせるなど、結果として第三者の自主的な意思によるものと認められない場合の判断がされれば「表示内容に関与した」とされることに注意すべきです。

もちろん、「事業者の表示」とならない例も多数ありますし、施行前であるがゆえに見極めの難しいグレーゾーンも存在します。さらに詳しい個別事例については私が講師を務める宣伝会議のオンデマンド講座「景表法『ステマ規制』指定に伴う緊急対策セミナー」で解説しています。ご興味のある方はこちらもご覧ください。

「事業者の表示と判別が困難」とは

「事業者の表示」とは事業者の広告やマーケティング活動ですから、それ自体は悪いものではありません。しかし、悪意のあるなしにかかわらず、「事業者の表示」なのかどうか消費者から見て判別が困難になっていると、不当表示となります。

1) 事業者の表示である記載がない場合

「事業者の表示」であることをまったく記載していない、あるいは、アフィリエイトサイトで表記をしていない場合は、表記を追加する必要があります。

2) 事業者の表示であることを不明瞭な方法で記載している

例えばハッシュタグで「#PR」と付けているが、大量のハッシュタグに埋もれていればNGです。動画でも、冒頭の短い時間に「広告」と記載しただけでは、判別が困難とされます。また、「AD」や「Promotion」といった英語表記も、分かりやすいとは言えない可能性が高いです。今回の規制開始によって、どの表記を使うかは、改めていく必要があります。

「ステマ規制」の運用基準で明瞭な例とされている方法【1】「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」という文言を用いる

【2】(【1】を用いずに)文章によって、「A社から商品の提供を受けて投稿しています」などと明文化する

なお、テレビCMに出演しているタレントの発言など、社会通念上事業者の表示であることが明瞭であれば、記載は不要とされます。

ここまで、法規制への対策までを駆け足で紹介しましたが、運用の知識をもっと知りたい方は、次回、ステマ規制に対応して改訂された「WOMJガイドライン」を中心に、具体例を紹介していきますのでそちらをお読みください。

山本京輔(やまもと・きょうすけ)
クチコミマーケティング協会(WOMJ)
運営委員会副委員長/ガイドライン担当
博報堂 ビジネスコンプライアンス局 クリエイティブリスクコンプライアンスグループ グループマネージャー。消費者庁・ステルスマーケティング検討会委員。博報堂ではクリエイティブ全般のリスク管理、および炎上・ステマ対策などを行っている。

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